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顎関節症の診査と診断と治療treat

顎関節症の診断

基本的に顎関節症の診断は、消去法で行われます。次の「顎関節症と鑑別を要する疾患あるいは障害」を除外した後、症型の樹形図をもとに顎関節症であるかどうかを正確に見極めていきます。

 

■Ⅰ.顎関節症以外の顎関節・咀嚼筋の疾患あるいは障害

 

■Ⅱ.顎関節・咀嚼筋の疾患あるいは障害以外の疾患

1.頭蓋内疾患(出血、血腫、浮腫、感染、腫瘍、動静脈奇形、脳脊髄液減少症など)

2.隣接臓器の疾患

①歯および歯周疾患(歯髄炎、根尖性歯周組織疾患、歯周病、智歯周囲炎など)

②耳疾患(外耳炎、中耳炎、鼓膜炎、腫瘍など)

③鼻・副鼻腔の疾患(副鼻腔炎、腫瘍など)

④咽頭の疾患(咽頭炎、腫瘍、術後瘢痕など)

⑤顎骨の疾患(顎・骨炎、筋突起過長症、腫瘍、線維性骨疾患など)

⑥その他の疾患(茎状突起過長症、非定型顔面痛など)

3.筋骨格系の疾患(筋ジストロフィーなど)

4.心臓・血管系の疾患(側頭動脈炎、虚血性心疾患など)

5.神経系の疾患(神経障害性疼痛、三叉神経痛・舌咽神経痛・帯状疱疹後神経痛などの各種神経痛、

筋痛性脳脊髄炎、末梢神経炎、中枢神経疾患、破傷風など)

6.頭痛(緊張型頭、片頭痛、群発頭痛など)

7.精神神経学的疾患(抑うつ障害、不安障害、身体症状症、統合失調症スペクトラム障害など)

8.その他の全身性疾患(線維筋痛症、血液疾患、Ehlers-Danlos 症候群など)

顎関節症の診査・診断の流れ

カウンセリング

カウンセリング

カウンセリングにて、どんな症状でお困りかなどを詳しくおうかがいします。

既往歴の確認

過去にどんな病気にかかったことがあるのか確認します。顎関節症でみられる症状には、他の病気が原因で起こるものあるため、既往歴の確認は正確な診査・診断のために非常に重要となります。

現在の症状の確認

現在の症状の確認

「口の開閉時に顎に痛みが生じる」「顎を動かした時にカクカクと音がする」「大きく口が開けられない」など、現在、どんな症状があるのかを詳しく確認します。

音や痛みの確認、咀嚼筋・顎関節の触診

顎関節からどんな音が鳴っているのか、またどの部分で痛みが生じているのかなどを確認するほか、咀嚼筋や顎関節などを触診して、関節包内部の異常などを確認します。

レントゲン・CT検査

レントゲン検査・CT検査

レントゲン・CT検査のほか、患者さまの症状に応じてCT検査などを行い、より詳しく現状を確認します。

診断・治療計画

診断・治療計画

診査・検査の結果を踏まえて、患者様に分かりやすく現状の状態、今後の治療計画をご説明します。

顎関節症の治療

顎関節症は生活習慣の改善でほとんど治ります

最近は、顎関節症を生活習慣病として考えられるようになり、日常生活を見直し、患者様自身が病気を理解し、気をつけ、患者様自らが医療に参加するというセルフケア・セルフマネージメントの姿勢が大切なのです。

<日常生活の中で気をつけること>

・上下の歯を接触させない

・硬い食品よりも柔らかい食事に変える

・ストレッチなどをして、緊張をほぐし、顎に負担をかけない生活を

・寒い日は顎の関節や筋肉を冷やさないようにする

・食事の際は両側の歯で噛む

 

・歯を食いしばるスポーツ、寒い中で行うスポーツは避ける

・楽器の演奏は控える

・合唱や発声練習、カラオケなどは避ける

・うつ伏せで寝ない

・頬杖をつかない

TCH(歯列接触癖)の改善

TCH(歯列接触癖)とは、無意識のうちに上下の歯を接触させている癖のことです。上下の歯を長時間接触させていると、筋肉が疲労して顎関節が押さえ込まれてしまい、痛みなどの症状が現れる場合があります。顎関節症の患者さまの多くにこのTCHがみられ、習癖をなくすことで、短期間で症状改善をはかることが可能となります。

顎関節症の治療では、適切な診査・診断により、鑑別を要する疾患あるいは障害を除外した後に、症型の樹形図をもとに顎関節症を正確に見極めて治療に移ることが重要となります。また、患者さまによっても異なりますが、顎関節症はそのまま放置していても症状が改善する場合があります。そのため、いきなり歯を削って噛み合わせを調整したり、開口訓練を行ったりするのではなく、患者さまの状態をきちんと把握した上で、スプリント(マウスピース)を使用した治療や、噛み合わせやTCH(歯列接触癖)の改善などを行い、症状悪化を抑制したり、症状改善までの期間を短縮したりします。

スタビライゼーションスプリント治療

スタビライゼーションスプリント治療

「スプリント」と呼ばれる透明なマウスピースを装着することで、顎関節や筋肉への負担を軽減します。患者さまお一人おひとりの噛み合わせや顎位に応じて、適切なスプリントを作製します。

理学療法

顎関節の筋肉のリラクゼーションとして、マイオモニターを使用します。他の治療法とも併用しながら使用します。

ご自宅でのセルフケア

歯科医院での治療と並行して、ご自宅でのセルフケア方法もお伝えさせて頂いております。左右協調性可動化訓練、筋訓練法、マッサージ療法など、患者様に合わせて様々なセルフケア方法をご指導させて頂きます。

右記のようにイラスト付きの用紙をお渡ししますので、ご自宅でもぜひセルフケアを継続してみてください。

下記画像をクリックすると画像を拡大してご覧頂けます。

開口訓練

開口訓練は、病態の説明をしっかりと行った上で患者様自身で行って頂く関節の可動範囲を広げるための方法です。左右の関節の骨に手を当てながら、左右に下顎を動かし大きく口を開けます。これらを1日決められた回数と一定の時間に行って頂きます。開口訓練も他の治療法と併用しながら行います。

マニピュレーション

マニピュレーションは、顎関節にある関節円板を正しい位置に戻すための方法です。頭を動かさないようにし、上顎を押さえ、下顎の奥歯に親指を置き、口を閉じる動きをしてもらいます。マニピュレーションも他の治療法と併用しながら行います。

修復物の調整

修復物の調整

被せ物(クラウン)などの修復物の不適合が、顎関節症の原因となる場合があります。そのため、必要に応じて修復物の調整を行う場合があります。

噛み合わせの調整

必要に応じて、噛み合わせを調整して症状改善をはかります。ただし、顎関節症の初期治療においては、いきなり歯を削って噛み合わせを調整するなどの治療は基本的には行いません。天然歯の場合、一度削ると元に戻すことはできませんし、それが原因で重篤な症状を引き起こしてしまう場合もあるとされています。そのため日本顎関節学会では、顎関節症の初期治療として歯を削って噛み合わせの調整を行わないことが推奨されています。